「常識」と「普通」への考察よ
ちょっとそんな話が出ていたのと、一部友人からせっつかれてるのもありまして。ちょっとだけきちんとした考察を書くことにしたわ。
あたしは、常識とか普通とか、そういう言葉が大嫌いなの。…別に「あたしが変だって言われるから普通って言葉に羨望を感じてる」わけではないわ。あたしは自分が「変だ」って言われることに誇りを持っておりますもの。ほーっほっほ。
…こほん。
そうねぇ。特に、同業者であるエンジニア系の人間がお仕事上でこんな発言をしたら、あたしは「血反吐が出なくなるまで」締め上げるわ。
それは、こんな理由があるの。
まず「常識」とか「普通」とかって単語を使ってる皆様に質問よ。常識とか普通ってなにかしら？
一般的によく耳にするのは「共通認識」って部分よね。「誰でも知ってる」とか、そういう言葉で表されることが多いわ。
では質問。あなたのおっしゃるその「常識」や「普通」は「本当に共通認識」なのかしら？ 自分だけがそう思い込んでるとかあなたの周囲だけの特別な共通認識とか、そういった可能性はちゃんと加味されているかしら？
もうひとつ。「共通認識」の母数にはどんなものがくるのかしら。 あなた一人？ あなたの周囲の中のよい友人？ 日本？ アジア？ 世界？ 10代？20代？30代？ 男性？女性？
そういった「共通認識の母集団」の定義と「母集団に対して納得できるだけの調査」を行った結果としての共通認識ならあたしもうなずいてもいいわ。でも、そこまでの「納得できる背景」をお持ちの「常識」とか「普通」って、いったいどれくらいあるのかしら？
はっきり言ってしまえば、あたしが知っている限り、突き詰めると結局ただの「俺はそう思う」的発言以上にならないんですの。「俺がそう思ってるからそれは共通認識だ」って、ちょっとすごい発想じゃなくってかしら？
そこに見えるのは、ただのエゴよ。自らのエゴイズムを「きれいな言葉で飾り立てて」如何にも正当であるかのように発言しているようにしか聞こえないわ。
で。じゃぁよしんば「共通認識」であると仮定して。それはやっぱり「多くの人がそう認識している」、言い換えると「多くの人がそう"思っている"」事柄に過ぎないの。普通とか常識とかって。
もちろん「多くの場合において」そうかもしれないわ。でも「今、目の前に在る事象」が「多くの場合」と一致しているかどうかってのは常に別問題なのよ？
そうねぇ。こんな例があるの。…残念なことに実例よ。
あたしの友人は、人生の早いタイミングで親御さんと縁を切っているの。だからその方は自活なさっているわ。その方が、ビデオレンタル店の会員になろうと思って登録をしたの。もちろんそんな状況ですから実家なんてないわ。でも、記入欄には「実家の電話番号」ってあったの。店員に聞いたらしいわ。「実家がないんですがどうしましょうか？」って。返ってきたのはこんな一言よ。「実家がないってことはないですよね？ ちゃんと書いてください」。親御さんと縁が切れていることを少なからず心痛に感じている相手に対して、どれだけ思いやりに満ち溢れた一言なのかしら？
そうねぇ。「多くの場合において」、実家ってのはあると思うの。ましてや友人のように20代30代の方々にとっては。でも、彼の取り巻く環境は「そうではない」環境なの。
店員さんはきっと「普通は…」っていう考え方をしたのね。確かに「普通に考えたら」実家ってのはあるもんだわ。それはきっと常識だと思うの。で、その普通とか常識ってヤツがどれだけ現状にそぐわない、無意味な発想か、あなたにはわかるかしら？
たま〜にいるわ。「それは普通の環境じゃないその人が悪いんじゃないか」って。素敵だわ。「持てる人間」のエゴイズムね。一度、海外にでもご旅行に行ってらしてくださいませ。NYのど真ん中で日本人のあなたが「俺は普通だ。お前達全員が変なんだ」って叫ぶ光景でも見てみたいもんだわ。
人は「普通」とか「常識」とかっていうフィルタを用いることで、弱者を虐げて相手を思いやらずに無思慮で無遠慮な行動をとりうるっていう一例よ。
あたしはそんな無神経な状況をことのほか嫌うの。だって、あたしはある意味「例外の塊」のような女*1なの。だから、そういう類の差別はたくさん見てきたわ。…まぁ不思議なことに、あまり正面から差別してきた人はいないんですけれども*2。
あるいはもっと単純に。「みんなと一緒なら問題ないのかしら？」って聞いてみてもいいわ。「赤信号 みんなで渡って 大惨事」っていうじゃない。それとも「戦争中はみんな殺人してるから人を殺してもいいんだ」かしら？ 最低の発想だわ。そういう「愚かな烏合」に、あんたは本当になりたいのかしら？
あたしはごめんだわ、そんな個性のない世界。だって、それってあたしがあたしじゃなくなるって事よ？ そんなの耐えられないわ。
あたしがエンジニア系の子たちに口を酸っぱくしていうのはこんなことなの。
「普通とか常識とかっていう"一般共通見解"なんていらない。必要なのは"目の前のお客様が何を欲しているか"を冷静に分析、判断する頭だ」ってね。
普通とか常識っていう言葉は、とても曖昧でいい加減で無思考な単語なの。でも字面だけはいいものだから、とても便利に一人歩きしていくわ。
でも、そんなまやかしのメッキなんてあっというまにはげちゃうの。その瞬間は、それはそれはみっともなくってよ？
あなたは、それでもまだ「普通」とか「常識」とかっていう愚かで物騒な言葉を使うのかしら？
